「昭和の日本を旅したい」そんな時におすすめの1冊
昭和の東京を知りたい方へ
昨日、旅の本を紹介したら、この本を思い出しました。
久しぶりに読んでみると楽しかったので、ご紹介します。
「遊覧日記」武田 百合子 著、武田 花 写真
著者は作家である武田泰淳の夫人で、花は娘さんです。
この本では、夫が他界した後に、彼女が訪れた場所のことが短編形式で書かれています。
【おすすめポイント1】著者の観察眼がすごい
全体を通して感じるのは、彼女のみずみずしい観察眼です。
ちょっと引用してみると、
「重なり合った暗緑色の葉と湿った土の上に、日除けのよしず屋根から縞目の日光が洩れている。今朝がた開いたばかりの鉢の形の花。昨日開いて今日はさらに開き切った皿の形の花。ほとんど金粉!と思える蕊の真上の一点に、蜂が来ては去り、また来る。やがて金粉にとび込んでまみれる。」(上野のぼたん祭の描写)
色や温度が実際に感じられるような、見事な描写です。
また、娘の花さんなどとの会話シーンでも、その場にいるような感覚になる描写で、著者は記憶力もすごいと思います。
【おすすめポイント2】昭和の東京が感じられる
彼女が訪れている場所は、東京が多いです。
上野、浅草、青山、代々木公園など…
彼女の「物見遊山」からは、今では想像できない東京の景色が描かれています。
とは言え、たとえば地下鉄銀座線など現在にもあるものが出てくるので、彼女が見た東京と現在の東京はつながっているんだなと感じます。
この本で取り上げられている「浅草観音温泉」、今はあるのかなと気になったので調べてみたら、2016年に閉館していました。
最近は温泉ではなく、銭湯な感じだったようですが、意外と最近まであったのですね。
【おすすめポイント3】「あの頃」を追体験する
最後の章は、場所ではなく「あの頃」とタイトルがつけられています。
戦中戦後を生きた彼女にとって、「あの頃」とは戦後まもなくの混乱の頃。
彼女にとっては、どこかへ行くのと同じ感覚で、「あの頃」へ行くことは簡単だったのでしょう。
情景の描写が多いですが、ところどころに彼女の心情が差し込まれていて、読んでいると自分も「あの頃」に立っているような気持ちになります。
今日の引用ひとこと
ゴム底の靴を履き、行きたい場所へ出かけて行く。一人で。または二人で。
私もフットワーク軽く、好奇心旺盛でいたいなと、この本を読んでいて思いました。
ぜひ昭和の東京を感じてみてください。
武田百合子はこちらの本が有名ですね。
何気ない日常が、みずみずしい文章で描かれています。
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