「日本の伝統色の歴史を知りたい」そんな時におすすめの1冊
日本の伝統色ができるまでを知りたい
前の記事で、オールカラーで色を楽しめる本を2冊ご紹介しました。
今回ご紹介する本は、ほとんどカラー部分がありません。
色そのものを見るというよりは、色の歴史を知りたい方におすすめです。
「日本の色を染める」吉岡 幸雄 著
著者は染色家で、ご実家は「憲法染」という色名のルーツとなる京都の染物屋です。
ご自身は、日本の伝統色を後世に伝えるために尽力され、出版社も設立。
私のおすすめポイントは次の3つです!
【おすすめポイント1】時代ごとに特徴がまとめられている
日本の伝統色は、時代によってさまざまな特徴があります。
例えば、平安時代であれば十二単に見られる配色の美しさが重視されたり、江戸時代では歌舞伎などの色が流行色として庶民にもてはやされたりしました。
この本では、時代ごとに章立てされていて、それぞれの時代の特徴がわかりやすく説明されています。
実際の色見本はあまり載っていませんが、色の背景や歴史を知る参考になります。
【おすすめポイント2】染色家ならではの視点
「藍」とか「茜」とか、色名は当たり前のように使われています。
しかし、実際にこれらがどのような植物なのか、どのように染められるのか、知っている方は少ないのではないでしょうか?
日本人は古代より、自然から色を染める努力をしてきました。
そのため、日本の伝統色は植物が由来の色名が多く残っています。
著者の吉岡さんは染色家として、いにしえの日本人が行ってきた染色を実際に行っていました。
彼の言葉は、実際に染めた人間しかわからない感覚に裏打ちされています。
現代の化学染料に対して、植物染料は手間がかかることも多く、染めることは簡単ではありません。
それでも、染めるために試行錯誤しながら、日本人は色と向き合ってきました。
それだけ日本人が自然の色を大切に思っていたことが、この本から感じられます。
【おすすめポイント3】衣装に関する説明もくわしい
日本の伝統色は、衣装を通じて発展してきている背景があります。
たとえば、平安時代の十二単では、透ける絹地を使用しているため、色も画用紙やパソコンで見るような色にはなりません。
伝統色というと、色そのものだけが紹介されていることも多いかと思います。
この本では、衣装のことも含めて解説されているので、実際にどのような形やデザインで色が使われていたかということがよくわかります。
読み手は、色のことも衣装のことも、ある程度わからないと読み進められないので、ちょっと難しく感じるかもしれません。
ですが、衣装のことがイメージできると、そこで使われている色のイメージもより実感できるようになると思います。
今日の引用ひとこと
古きを温ねる仕事ではありますが、21世紀に向けて、地球にやさしい環境を築く、ともいえる仕事です。
今回は、著者の吉岡さんのホームページから。
私は1度だけ吉岡さんにお会いしたことがあるのですが、職人らしいストイックさと頭の良さを感じるかっこいい方でした。
2019年に惜しくも亡くなっていますが、まだ吉岡さんのホームページは残っているので、興味のある方はぜひのぞいてみてください。
ここまでご覧いただきありがとうございます。
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