哲学を教養として知りたい方へおすすめの1冊
この時代を理解するために、「哲学」って使えないかな?と思って読んでみました。
「教養として学んでおきたい現代哲学者10人」岡本裕一朗 著
著者は長年、大学で教鞭をとってきた哲学研究者。
タイトル通り、この本では現代哲学の代表的な10人の業績が解説されています。
今回は、私が印象に残った3人を簡単にご紹介します。
(ちなみに、私がこの本を読む前に知っていたのは吉本隆明だけでした)
「21世紀の若き天才哲学者」マルクス・ガブリエル
彼の主張で面白いのは、すべてのものは世界の中で存在するという「新実在論」です。
私たちは普段の生活で、実際に目に見えるものが存在しているものと思っているのではないでしょうか。
逆に、目に見えないもの、たとえば誰かの空想とか妄想みたいなもの、は存在していると表現しないと思います。
ですが、ガブリエルは見えるものでも見えないものでも、すべて存在すると言い切ります。
その「なんでもあり」な感じは、現代っぽくていいなと思いました。
ただ、どうも「道徳主義」な部分もあるようで、たとえばAIとかも「道徳的に」否定しているとのこと。
「哲学界のロックスター」とも呼ばれており、哲学界に新しい風を吹き込む存在なのかなと思ったのですが、意外と保守的なのがちょっと個人的には残念な部分です。
「メディアこそがすべてである」フリードリヒ・キットラー
ものを伝える手段としてのメディアですが、技術の発達とともにメディアのカタチも変化しています。
まずは、音楽や写真のように、音声や映像を使ってその場で相手に伝えるもの。
伝えられる相手は、見るとか聞くことができれば簡単にその情報を受け取ることができます。
次は、書物のように文字を使って、受け取る側が時間の制約がなく伝わるもの。
伝えられる相手はいつでも情報を受け取ることができますが、そもそも受け手に読む能力があることが前提となります。
そして、現代は、すべての情報をデジタル化し数字に変えてしまうので、何で伝えるかはもはや問題ではなくなっているとキットラーは説明しています。
人間の脳も神経信号で理解しているということを考えると、たとえばAIと人間とが数値化された情報のままで、やり取りができる可能性があるとも想像できます。
数字のままやり取りするのならば、もはやどんな媒体で、とか、どんな方法で、といったことは全く関係ありません。
もちろん、これは極端な話ですが、デジタル化が進んだ今、改めて「伝わる」ってどういう意味なんだろうかと考えるきっかけになりました。
「柔軟さが持ち味」ダニエル・デネット
ただそれは海とか山といった「大自然」という感じではなく、ざっくりというと「人は熱いものに触ったらやけどするのは自然だよね」みたいな、生物学とかのレベルで当たり前のことを表現する感じで使われています。
この考え方は突き詰めていくと、「じゃあ人間が勝手に感じたり行動したりする自由は、まったくないんだ」という結論にもなります。
ただデネットはそういう結論ではなく、自由と言われているものも自然科学的にどのように説明するのか、ということを論じています。
たとえば、「心」に関して、彼は外界に有効な方法で対応することを「心」と定義づけました。
そのため、人間以外のAIやロボットなどにもすべて「心」があるとしています。
そう言われると、何となく納得してしまうのですが、一方で「あれ?」と思いませんか。
多分、この説明だと、「心」は私たちが普段感じるようなふんわりとした何かではなく、心臓など何かの機能を持つ器官のように見えるからかと思います。
はたして、外界に有効な方法で対応するだけが「心」の機能なのかな?と定義そのものに疑問を感じてしまうのです。
こうなってくると、もはや彼の理論は「定義ができたら何でもあり」という感じです。
ただ、目まぐるしく変化し続ける現代社会においては、定義そのものを柔軟に変えていくこともひとつの方法なのかもしれません。
自分の今いる現代を深読みしたい、という方におすすめの1冊です。
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